遠い太鼓。

遠い太鼓 (講談社文庫)

遠い太鼓 (講談社文庫)


ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、どこか遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。
そしてその音を聞いていくうちに、僕はどうしても旅に出たくなったのだ。

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村上春樹が37歳〜40歳にかけてヨーロッパを旅した記録を読み終わった。
そして、旅に出たくなった。切実に。
たぶん『住むこと』と『旅すること』は同じ場所にいても全く感じ方が違うと思うのだけど、いつも気ままに滞在しちゃう私の旅の感覚を思い出させるには十分な風景がそこにはあった。


カフェでぼーっとしてるおじさんを観察したり
ぶらりと立ち寄った小さなレストランが安くて美味しかったり
宿の人がすごく親身になってくれたり
海が信じられないくらい奇麗だったり


旅に出たとしても何かが残るわけでも何かが劇的に変わるわけでもないし、楽しいといってもやっぱりくたくたに疲れてしまうけど、なんでだか止められない。

普段の生活では見過ごしてしまいがちな些細なことが、旅の中ではキラキラしたモノになる。
ほんとに大切なものを気付く喜び。